住宅事情が開く問題系から  
     
  日本の都市は殆どが戸建て住宅で覆われている。戦後の土地税制が個人の土地所有を推奨し、戸建て住宅所有に誘導した結果でも有るのだが、いずれにしても世界的に見ても特異な都市形態であると言える。近年この都市のそしてその地続きの郊外「宅地」で何が起こっているかを見てみる。
 
 
(1) 先ず人口減によって空家が増えたり、住んでいても住人の高齢化によって独居世帯や子供が独立後の2人世帯が増え、比較的古い郊外宅地では個室が殆ど使われていない「2階シャッターストリート」が現象している事例が全国何処ででも散見出来るようになってしまっている。<FIG1>要するに住VOLUME を使い切れていないし、結果、スカスカの街は活力が低下して行く。
 
2階はほとんど使われていない比較的古い宅地の風景 <FIG 1>

(2) 建て替えや宅地更新が進んでも累進課税の効力が大きく、若い世帯は元あった土地の大きさを維持出来ない。比較的余裕のあった区画は細切れにされて宅地開発されたり、前庭部を切り売りした旗竿地化が進んでおり、その結果、宅地全体の価値の低下を招く事例が多く見られる。 それぞれの住宅は庭は持たない使えない住棟間の隙間を持っただけの所謂狭小住宅化<FIG2>してゆく傾向にあり、それらは外部環境との連関が希薄な「引き籠もり」住宅化してしまっている。 この現象は地域コミュニティ崩壊と表裏の関係にあるだろう。
 
「使えない」住戸間の隙間事例 <FIG 2>
(3) 住宅内部を見ると大量消費時代を引き摺ってモノだらけで、使える居住スペースは小さくなり家全体が倉庫化しており、住性能の著しい低下状態に置かれた家<FIG3>が多い。
等々、言わば建築本体の性能以外の周縁の問題によって日本の住環境は益々悪化しているように見える。しかし、建築家はこんな問題群は素っ飛ばして「作品」を作っているのではないか。住宅の社会問題に解答するのと、作品を作ることは別の次元のこととしてしまっているのではないか。自分が建築家として住宅に関わり始めた時、これらのことを強く感じたのである。
住宅は個々に与えられた与件に答えると共に「社会的」であらねばならない。言い換えると、住宅はその一個の住宅の中に特殊解に答えと共に一般解への解答も用意されていなければならない。現代の住環境に起こっている現象の中に潜む問題系に照明することに新しい住宅の可能性は開かれるのであり、故に我々は理想から考えるのではなくて状況つまりは「事情」から始めるのである。
 
モノで溢れる室内 <FIG 3>
  では、具体的に「開かれた」作り方は如何に可能か。商品(製品)住宅も建築家が作る「作品」性の高い住宅と同様上記問題に対しては無力だが、無関心から来る「作品」の無力性より、「商品住宅」は構造的な理由によって無力であり、かつ大きな量を占めているが故に実は大きな問題がある。つまり、「製品」化された「商品」住宅に対し批評的にアクセスする住宅の作り方の開発に、建築によって住宅を「開く」可能性があるのではないかと思い至ったのである。
 
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